第27回関西大会抄録集

放射線被ばくの真実

原発のない健康社会を目指して

チェルノブイリ原発事故殉職消防士のメモリー
チェルノブイリ原発事故殉職消防士のメモリー

 

ご挨拶

 

 大会運営委員長・全国健康むら21ネット代表 小山 登

 

 

プロフィール

 

こやまのぼる

 

1941年11月6日大阪府に生まれる。現在大阪府吹田市在住

 

1964年  立命館大学経済学部卒。

 

1967年  日本で3番目のロックフィルダム工事に参加。

 

1975年  千島喜久雄先生(日本綜合医学会学会頭)・馬淵通夫先生(日本綜合医学会

 

       学会頭)・竹内義治先生(大阪府顧問)に師事し財団法人生活環境問題研究

 

       所(健康の森)を創設。理事就任。

 

2015年  同上理事辞任。

 

2016年  一般財団法人生きがい文化綜合研究所準備室。

 

2015年  一般社団法人豊中市日本中国友好協会理事・副会長

 

2003年  全国健康むら21ネット代表就任

 

2000年  NPO法人日本綜合医学会理事就任

 

2000年  NPO法人街づくり支援協会理事長就任

 

 

 

提案は、『国民一人一人が享受したその暮らしの生活利便』(安全と安心)の裏側にある大きな負の遺産(放射能を含めた大量放棄物)の処理を後世に先送りすることなく自覚をもって自己責任を果たさねばならない。

 

最近の原発に関わる報道3件について

 

その1『もんじゅ』10年で6000億円 政府試算、廃炉含めて検討

 

管理上の相次ぐミスで停止中の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)について、現行計画に基づいて今後10年間運転する場合、国費約6000億円の追加支出が必要になると政府が試算をしている事が8月28日分かった。既に約1兆2000億円を注ぎ込みながら稼働実績がほとんどなく、政府は廃炉も選択肢に含めて今後のあり方を検討している。

 

 「もんじゅ」の再稼働には、福島第一原発事故を踏まえた高速増殖炉の新規制基準を規制委が作った上で、これに適合させる改修工事が必要になる。内閣官房を中心にした費用の検討では、こうした対策費に10年間の燃料製造費や電気代、人件費を加えると追加支出は約6000億円に達するという。停止中の現在も、維持費だけで年間約200億円がかかっている。

 

その2『負担額4兆000億円超す』=福島原発事故で国民転嫁ー除染・廃棄物費用など

 

 東京電力福島第1原発事故でかかる除染や廃炉、損害賠償などの費用のうち、国民の負担額が2015年度末までに4兆2660億円を超えたことが8月28日分かった。日本の人口で割ると、一人3万3000円余り。東電は政府に更なる支援を求めており、今後も拡大する見通しだ。現在までの電気料金の値上げ分に含めて賠償に回す一般負担金の集計では計2兆3379億円支出されたことが判明。政府が原子力損害賠償・廃炉等支援機構などを通じて立て替えている。

 

その3『制御棒処分』70m以深 国の管理10万年 規制委方針

 

 原子力規制委員会は8月31日、原発廃炉で出る放射性廃棄物のうち、原子炉の制御棒など放射能レベルが比較的高い廃棄物(Ⅼ1)の処分の基本方針を決定した。

 

地震や火山の影響を受けにくい場所で70mより深い地中に埋め、電力会社に300年~400年年間管理させる。その後は国が引き継ぎ、10万年間、掘削を制限する。原発の廃炉で出る放射性廃棄物は、使用済み核燃料から出る放射能レベルが極めて高い高レベル放射性廃棄物(Ⅼ1)と原子力圧力容器の一部などレベルが比較的低い廃棄物(Ⅼ2)と周辺の配管などレベルが極めて低い廃棄物(Ⅼ3)に大きく分けられる。

 

最近よく耳にするのが、各方面の予算だ。『世の常』となりつつある。その顕著な事例として東京オリンピック予算である。当初7000億円と報道されていたがいつの間にか2兆とも3兆ともいわれている。築地の移転も同様であるが目に見えるところは未だしも、世の中同様の事象現象は星の数ほどあるだろう。その潜象なる課題・問題を掘り起こし見事に問題解決する事が人間の知恵と謂われている。18世紀後半のヨーロッパにおける『産業革命』により、大量生産を繰り返した。人間の欲望の塊がなした、自分だけ良ければよい。という風潮が蔓延している。大量生産・大量消費そして大量投棄をしてしまった。

 

 この問題解決のためには『異文化』に対する認識と理解と共有だ。その基礎部が論語であると思う。中でも子貢が質問し、孔子が答えた一節に尽きるだろう。

 

子貢問曰「有一言而可 以終身行之乎」 子曰『其恕乎 己所不欲 而施於人』

 

 

 

 

ご 挨 拶

         NPO日本綜合医学会副会長 関西部会会頭

                        協和マリナホスピタル リハビリ科 健診科

                                      福原 宏一

 

プロフィール ふくはらこういち

 昭和47年京都府立医科大学卒業。同大学の小児科に入局。49年国立舞鶴病院小児科勤務。50年京都府立医科大学小児科大学院に入学。54年医学博士学位取得。同年健康保険鞍馬口病院小児科勤務。56年京都府立医科大学小児科勤務。61年済生会京都府病院小児科勤務し、アレルギー疾患に対し食事、断食療法を行い5成果を上げる。平成元年サンスター社の産業医となり健康指導を行う。12年自宅開業。13年介護老人保健施設ケア・スポット梅津の施設長となり、入所中の老人に自然療法を施す。26年千里中央病院内科勤務。27年より協和会マリナホスピタル検診科、リハビリ科に勤務している。

 2011311日東日本大震災が発生し、その大津波のために福島原発の冷却装置の電源が破損して炉心融解という大事故が発生しました。津波の高さが想定を越えたものであったと言われても、それで納得できるはずもありません。また、たとえ原子炉の事故が起こっても丈夫な建屋で覆われているので大丈夫と言っていたのに、水素爆発でいとも簡単に建屋は吹き飛び、放射性物質で大気・大地・大海は汚染されました。原発の安全神話は木っ端微塵吹き飛んだことは誰の目にも明らかです。事故の正確な検証も深い反省もなく、関係者は誰一人その責任をとらず、原発は再開されましたが、それでいいのか深い疑念を覚えずにはいられません。

 そもそも原子力発電を行うと使用済み核燃料は放射性のゴミとなり、煮ても焼いても消失せずに存在し続け、その半減期は数万年であり、世代を越えて延々と冷却し続けねばなりません。深い穴を掘って埋めるという考えはありますが、地殻変動の可能性を考えると絶対安全という保証はどこにもありません。核のゴミの処理方法がないことを理由に原発を行わなかった国もあり、それが正しいありかたのはずです。

  政府は原発のより厳しい安全基準を定め、それを満たしているので安全であるとして原発を再開しましたが、一定の安全基準を満たせば絶対安全という保証はないことを福島原発事故は如実に人類に突きつけました。原発は安価に巨大なエネルギーが得られると言っても、ひとたび原発の大事故が発生するとその被害は甚大で、計り知れないほどの国費が必要となります。原発がすべて止まった時も停電は一度も起こらず、原発がなくてもやっていけることが証明されました。得られるエネルギーと危険性を天秤にかけた時、原発はあまりにも危険すぎるのです。私達はまず脱原発を実現させ、エネルギーに限らずすべての分野で持続可能なシステムの構築に努力を傾けねばなりません。

 

 

本部ご挨拶

            放射線被ばくの真実

              ―原発のない健康社会を目指して―

                           NPO 日本綜合医学会理事長 山口康三

 

 

プロフィール

 NPO日本綜合医学会理事長・食養学院院長。血液循環療法協会顧問。回生眼科医院院長。日本眼科学会認定専門医。日本東洋医学会専門医。眼科医、漢方内科医として診療に携わるなかで、「食事」「運動(歩くこと)」「睡眠」「ストレスと心」の4つからなる「生活改善療法」を体系化、眼の病気や生活習慣病の治療を推進している。著書「白内障・緑内障が少食でよくなる」「ほんとうは治る防げる目の病気」「医者が教える正しい少食術」など多数。

  

 本日は関西大会開催に際しまして、本部から一言ご挨拶を述べさせて頂きます。

  現在東京電力福島第一原子力発電所では、廃炉に向けた作業が進んでいます。事故から5年余り、現在敷地内の放射線量を下げる取り組みが続けられていますが、原子炉のある建屋の内部はどんな状態になっているのか詳細は未だわかっていません。

  事故当時福島第一には6機の原子炉がありましたが、事故の際に1号機から3号機で、内部の核燃料が溶け落ちるメルトダウンという深刻な事態が起きました。この時核燃料や構造物が溶けてできた塊が核燃料デブリです。廃炉を進めるには、世界でも初めての取り組みであり、廃炉への最大の難関と言われる核燃料デブリを取り除かなくてはなりません。

  一昨年6月に政府と東京電力が改訂した廃炉工程表によりますと、当面の最大の難関である核燃料デブリの取り出しは、2021年から始めることになっています。今はそれに向けた準備作業という位置づけで、原子炉建屋の放射線量を下げる除染作業を行ったり、ロボットで原子炉建屋内の状況を確認する内部調査などが行われたりしています。核燃料デブリの取り出しが行われた後、ようやく建屋の解体に入るという予定で、廃炉が完成するのは早くても2051年ぐらいと言われています。

 原発が稼働していなくても、電気の供給には不足していませんでした。さらには、この数年風力発電、太陽光発電が目覚ましく発展しています。米国では2015年、新たな発電投資の約75%は風力発電と太陽光発電が大部分を占める再生可能エネルギーに向けられています。

  そして、今微生物による発電が注目されています。1980年代、米国ニューヨークの近くのオナイダ湖の底から発電をするシュワネラ菌が発見されました。シュワネラ菌は乳酸を分解して電子を出します。また別の発電菌であるジオバクター菌は酢酸を分解して電子を出します。発電菌は現在20種類発見されています。1立方メートルの微生物燃料電池で5軒分の発電ができると言われています。

  発電を使った微生物燃料電池の特徴は廃水や廃棄物をエネルギーに変換できることです。廃水や廃棄物を集めることができれば一定の発電量が出せることや太陽光発電や風力発電のように気候にあまり影響をうけないことが特徴です。国土の狭い日本は、その割に人口が多く廃棄物も大量に出るので、廃棄物を利用する微生物燃料電池は魅力のある新エネルギーと考えられています。

  さらに下水処理に発電菌を活用すれば、下水処理をしながら、同時に発電が出来てしまいます。下水処理に使用している電気の80%を削減できると試算されています。

  この大会を通して会員の皆様に原発のない健康社会を目指す重要性をお伝えしたいと考えております。そして世の中を変えるため、日本綜合医学会会員の増加に御協力を頂きたいと存じます。お一人お一人が真剣になれば世の中は必ず変えられるはずです。皆様と共に平和な日本の未来を築いていきたいと考えます。

 

 

チェルノブイリに学ぶⅡ―健康障害の子供たちの治療

                          血液循環療法協会会長・当学会理事 大杉幸毅

 

 

プロフィール

 1949年岡山県生まれ。元農林技官。血液循環療法協会会長。血液循環療法専門学院・大杉治療院院長。手技療法一筋36年、療法の指導を通し「思いやりといたわり」のこころを広め、病人の少ない癒しの社会を目指し診療・療法指導と健康運動に活躍中。著書に「シコリを解けば病気が治る」「血液循環健康法」「指1本で病気が治る押圧メソッド」「ひざの激痛が指1本で消えた!驚異のひざ押圧」「簡単血流アップ押圧で首痛が消える!!」など多数。

  福島原発事故から5年が経ったが健康被害はどうなのだろうか? ウクライナでは30年経つ今でも極低線量被曝(年間被ばく1ミリシーベルト以下)地区で子供たちの健康被害が多く出ているのをNPO法人「食品と暮らしの安全基金」が2012年に見つけ支援活動を続けている。私は昨年、このプロジェクトに招待されて子供たちの治療をしてきた。私が治療したのは、首が痛い、頭が痛い、ひざが痛い、足が痛いなどと訴える小学生から中学生のこどもたちで、あまりにも数が多い。また、四肢麻痺(手足の運動麻痺)の男の子も2人、延べ30人以上の治療と教師、保護者に治療法のセミナーをした。

 

1)血液循環療法セミナー

 

ウクライナ北部のモジャリ村学校で「血液循環療法セミナー」をやった。 参加者は、20数名。最初に、血液循環療法の理論と基本実技を簡単に説明したが半信半疑なので、「悪いところにはシコリがあり、その部の循環を良くすればすぐに痛みが取れる。」といって、実演をした。やや高齢のひざが痛いと訴える女教師をほんの数分の施術で痛みを取ると、大喝采と拍手。次に、首が痛いと訴える肥満気味の女教師と腰痛の女教師を治療し、前屈が軽く出来て痛みが取れ親指を立てて「OKサイン」。最初硬い表情だった参加者も、興味を示してだんだん乗ってきた。そこで、実技練習。お互いに肩で押圧の練習をしてもらいながら、私が全員の肩を押圧して、圧度や指の離すタイミングを体験した。次に、自己治療のやり方を頚、肩、腰、お腹の部位で説明した。

 

2)内部被ばく健康障害の子供たちの治療

 

ホテルで四肢麻痺のミーシャ君のお腹を診た。やはり予想通り臍部硬結があった。これは瘀血(おけつ)の腹症(注)。ワジム君も同じだった。 モジャリ村学校で女性職員とふくらはぎが痛い肥満気味の女の子の治療を頼まれ、すぐに痛みを取った。 ナロジチの学校では、頭痛の男の子、ひざ痛の女の子、心臓病の歩けない男の子の治療をして良くした。ピッシャニッツア村学校では、ひざ痛の女の子と男の子、頭痛の上級生の女の子を治療し良くした。 ホテルの部屋でミーシャ君とワジム君の治療をしながら現地のマッサージ師にやり方を指導した。

 

ウクライナ国立歌劇場でバレー教師(舞台監督)その弟子で若手ソリスト(バレーコンクールで金賞5回受賞者)の治療をした。体重をかけると右(足首)内果の外側と内側の2か所が痛いと訴えていたが治療して良くした。念のため、自己治療のやり方も教えた。「ザプルーカ」(がんの子供を支援する施設)を訪問し、神経芽腫の手術をした下肢麻痺の後遺症の男の子と施設長の治療をした。男の子の下肢は麻痺して動かなかったが、拘縮を緩めて動きを良くした。次に、「チェルノブイリ連盟」の事務所を訪問し、連盟代表と2名の女性スタッフの肩頚を治療して喜ばれた。

 

今回施術した対象者は、セミナーで運動器系に愁訴を持つ中高年の方たち、小学校の生徒たち四肢麻痺を持つ子供など延べ30人以上のウクライナの人たちを治療した。その結果、放射線被曝が原因であっても、「悪いところにはシコリがあり、血液循環療法が有効で、効果があった」ということだ。  福島で起こっている健康障害も「血液循環療法で対処」できることが実証できた。また、ウクライナの女性の中には日本人と同じ瘀血体質の人がいるということも解った。ウクライナの人たちは高カロリー・高脂肪食で肥満体が多く(特に中年以降)、運動器系では腰痛・ひざ痛、生活習慣病では心臓病やがんが多いという印象だった。

 

3)四肢麻痺のワジム君の治療

 

一昨年春、当会の治療師が寝たきり状態から介護付きで歩けるまでに治療した。今回は、おなかとそけい部、そして頭と上肢の治療を集中的に治療し、お母さんが片手で支えるだけで歩け、足も良く上がって引きずらなくなり、歩き方も力強く早くなった。また手の不随意運動は、昨年は自分で食事もできない状態だったが、今回はお菓子を自分の手で受け取って食べることができるようになった。オルヴチ滞在中出来る限り治療し、朝は7時半から夜は7時から12回治療し(計9回治療)、しゃべり方もはっきり発音できるようになり、話す内容も10歳とは思えないくらい大人びたことを喋り、最後のインタビューでは両親に替わり「ここまで良くしてくれてありがとう。また、家まで買ってくれありがとう。おかげで、僕の部屋も出来るよ。」と言って、みんなを感動させ、私たちは涙ぐんだ。頭の働きも良くなったのだと実感した。昨年は「歩くようになりたい」というのが希望だったが、今回は「勉強して将来コンピューターの仕事がしたい。」と自分で話し、さらに意欲が出て進歩したことが確認できて私たちは喜んだ。最後にワジム君の両親に、治療のやり方を指導した。

 (ワジム君とバレリーナの治療、インタビュー、セミナー動画はユー・チューブで「血液循環療法」と検索すれば見られます。)

 (注)瘀血(おけつ)の腹症 

 瘀血は漢方理論で末梢の血液循環が悪く、冷え性や様々な不定愁訴が現れる病理概念。臍下部に圧痛性の硬結が現れる。

 

 

 

 

チェルノブイリに学ぶ1-極低線量汚染地でも健康被害が出ている

                              月刊「食品と暮らしの安全」

                                        編集長  小 若  順 一

 

プロフィール

 1950年岡山県生まれ。「食品と暮らしの安全基金」代表。元日本消費者連盟事務局員。1984年「日本子孫基金」設立。ポストハーベスト農薬の全容解明など食品の安全を守る活動家。2012年からウクライナの放射線被曝の健康調査開始し、「チェルノブイリ子供の痛みをなくすプロジェクト」(日本プロジェクト)に取り組む。著書に「食べるな、危険!」「食べ物から広がる耐性菌」「食べなきゃ、危険!」「食事でかかる新型栄養失調」など多数。

 

 福島第一原発事故で、どんな人体影響は起きるのか、特に孫世代からの遺伝的影響を知るため、20122月からウクライナへ取材に行き始めた。

 

5月の取材中に、足痛や頭痛の子があまりに多いことから、遺伝的影響ではないと気づき、「痛み」の調査に切り替えた。

 

 汚染地や、汚染地に近い地域では、頭痛や足痛の子が半分以上いた。そこで、汚染を減らして、治るかどうかを確認する調査に切り替えた。

 

  1. まず、保養地に70日間行ってもらった。

    45日までは良くならなかったが、54日目までにすごく良くなった。

  2. 次は、食品汚染を減らしたら、頭痛、足痛がどうなるかを調査した。

    汚染度の高いキノコとベリーを食べないようにすると、すごく良くなった。

  3. その次は、カリウム肥料を畑にまいて調査した。

    ジャガイモ等へのセシウム移行率を下げると、さらに健康状態が良くなった。

  4. その次は、放牧している牛に、セシウム汚染のない穀物飼料を食べさせて、牛乳の汚染を減らした。

    すると、やはり健康状態が良くなった。

     

    ウクライナは原発事故から30年たって、汚染地に住む100万人ぐらいの人に健康被害が出ているのに、国としては住民の健康被害を忘れ去っていた。

    事故処理を行った「リクビダートル」の被害は社会的に認知されているが、クリミアと東部紛争のため、国家財政が破たん寸前になり、「リクビダートル」の権利を守るチェルノブイリ連盟への補助金が今年から打ち切られ、連盟は活動をほとんど停止している。

     

     このような中で、我われの活動は「日本プロジェクト」と言われるようになり、現地の新聞記者は4000人の健康を良くしたと言っている。

    ウクライナの最大支援国は日本で、日本政府は2014年に紛争が起きたころから2000億円ほどを支援している。我われは政府の2万分の1ほどしか支出していないが、感謝してくれているウクライナ人の人数や、感謝の強さは、我われの方が、日本政府よりはるかに勝っているようである。

    今年4月に安倍首相がウクライナを訪問したとき、ポロシェンコ大統領は安倍首相に謝辞を述べた。日本国の莫大な援助に対して大統領が謝辞を述べるのは当然である。だが、現地の新聞記者によれば、大統領は我われの「日本プロジェクト」に対しても謝辞を述べたが、大使館も外務省も安倍首相も、民間の活動成果に気づかなかった。そして、我われの援助申請をボツにして、次回の申請時に日本プロジェクトの成果を示すようメールが届いた。

    土壌汚染のレベルは1㎏当たり、福島の農地が3000ベクレル、東京・新宿が500ベクレル、大阪は数ベクレルである。私が「全員、病気よ」と学校で言われて、調査を始めたモジャリ村の農地は127ベクレル。ウクライナの方が土壌汚染は低いが、農作物は、福島と比べてウクライナは100倍から1000倍も汚染レベルが高い。

    ウクライナは、セシウムと化合して離さない粘土の少ない土質なのに、政府にお金がないため、カリウム肥料をほとんど投入しなかったから、農産物の汚染がひどいのである。

    原発が爆発した国どおしの国民として、ウクライナの健康被害者がまったく救われないでいたのを、4000人ほど救い出したことには満足している。しかし、まだ、その2001000倍くらいの被害者がいるので、その人たちをできるだけ多く救い出すよう今後も努力したい。

 

 

 「放射線被ばくと健康障害」-長寿命放射性元素体内取込み症候群-

 

                 北海道医薬専門学校 校長

                          国立病院機構北海道がんセンター名誉院長   西尾正道

 

 

 

プロフィール

 1947年北海道生まれ。74年札幌医科大卒。同年国立札幌病院・北海道地方がんセンター放射線科勤務。04年独立行政法人国立病院機構・北海道がんセンター放射線診療部長08年院長、13年名誉院長、北海道医薬専門学校学校長。著書に『がん医療と放射線治療』『がんの放射線治療』『今、本当に受けたいがん治療』『放射線健康障害の真実』 『正直ながんのはなし』『被ばく列島』など。その他、医学領域の専門学術著書・論文多数。

 

 1938年に核分裂反応が発見され、まず核兵器が開発された。戦後は「原子力の平和利用」と称して原子力発電が開始された。しかしこうした科学技術が生み出す人工放射線の人間を含めた生物生態系への影響に関しては科学的な研究や分析は疎かにされ、核分裂反応を利用して利益を得る人達は国際的な「原子力マフィア」を形成し、人類の命と健康よりも多大な利益を優先する対応が続いている。講演では世界的に流布され、国内の諸法律の制定の根拠となっているICRP(国際放射線防護委員会)の疑似科学的物語や誤魔化しについて論じる。核産業の発展過程で放射線の健康被害のデータは蓄積しているが、深刻なものや影響を過少評価するために色々な問題が隠蔽されている。

  まずその一つに人体影響を被ばくしている空間的線量分布を無視してシーベルト(Sv)という全身化換算した単位で論じることにより、健康被害を分析しにくいものとしている点である。

  また内部被ばくの深刻さを隠蔽するため、1950年に発足したICRP2年後に内部被ばくを検討し報告書を出す委員会の審議を打ち切った。1952年から国際的に内部被ばくの問題を隠蔽する仕組みとなっているのである。被曝形態の違いを例えると、「外部被ばくは、まきストーブにあたって暖をとること、内部被ばくはその燃え盛る”まき”を小さく粉砕して口から飲み込むこと」と表現できるが、どちらが危険かは誰でも理解できる。そのため、放射線の裏()の世界の研究では内部被ばくに関しては「しない・させない・隠蔽する」姿勢が続いているのである。

 

さらに、内部被ばくの線量評価に関しても過少評価する取決めも行っている。ICRPは「線量が同じであれば、外部被ばくも内部被ばくも同等の影響と考える」と取り決めているが、ここでは被ばくしている細胞や組織の線量分布が全く考慮されていない。放射線は基本的に被ばくしている細胞にしか影響は出ない。粒子線であるα線・β線では飛程が短く、周囲の細胞にしか影響せず、また近傍周囲の細胞に全エネルギーを付与するため影響は大きい。空間的線量分布を考慮せずに、限局した範囲の細胞の線量を、臓器(等価線量)や全身の細胞数で全身化換算(実効線量)することはできないのである。この線量評価の誤魔化しを例えると、「目薬は23滴でも眼に注すから効果も副作用もあるが、この23滴の量を口から飲ませて、投与量は非常に少ないので心配ない」と言っているようなものである。

 

そして福島原発事故後はセシウムホットパーティクルとも言える放射性微粒子の存在が確認されており、健康被害の本態に迫る知見が報告されている。これは「長寿命放射性元素体内取込み症候群」としての健康被害の原因となる。8,000ベクレル/kg以下の除染土を全国の公共事業に使用するような不見識な政策で「一億総被ばく国家プロジェクト」が進んでおり、日本人の健康問題が憂慮される。

 

 

文明社会の未来とフクシマ後の生き方

 

              使い捨て時代を考える会 相談役 槌田 劭

 

プロフィール つちだ たかし

 1935年京都市生まれ。1958年京都大学理学部卒業。ピッツバーク大学留学。京都大学工学部助教授。1973年伊方原発訴訟に住民側証人として参加し敗訴後、科学技術そのものの社会でのあり方に疑問を持ち、1979年京都大学を辞職。京都精華大学教員(美術学部)。1973年使い捨て時代を考える会設立。1975年安全農産供給センター設立。有機農業運動及び環境運動に深く関わる。日本有機農業研究会幹事など歴任。著書に『脱原発・共生への道』『共生共貧 21世紀を生きる道』『地球をこわさない生き方の本』『工業社会の崩壊』『原発事故後の日本を生きるということ』(小出裕章・中島哲演・槌田劭)など多数。

 

 1.未来の社会と科学の力への夢

     1941 太平洋戦争 科学総力戦

 

   1945 敗戦 「欲しがりません 勝つまでは」→貧困と飢え

 

          ヒロシマ・ナガサキ被曝 敗戦

 

  1949 マンガ「ブロンディ」/ 湯川秀樹のノーベル賞と「科学の力」

 

   1953 “atoms for peace

 

 

 

  1. 科学の進歩----放射能の危険と科学技術への疑問

 

1954 ビキニ水爆実験-原水禁運動-科学技術への疑問、

 

原子力研究3原則(自主民主公開)

 

   1956 宇治原子炉(茶業者など地元反対で挫折)

 

   196870 大学紛争

 

   1973 使い捨て時代を考える会

 

   197578 伊方原発訴訟

 

   1978 住民側敗訴-------1979 京大辞職 / 科学者をやめる

 

   1979 スリーマイル島原発事故

 

   1986 チェルノブイリ原発事故

 

   2011 福島原発事故

 

 

 

  1. 福島原発事故と被災に学んで

 

311日 福井県越前市 (敦賀から10K 日本有機農業大会) で眠れぬ夜に考えたこと

 

福島の現実を直視 (無責任な東電と被災者の苦難---避難できぬ人々と子供たち / 土と共に生きる農民たち / 避難の支援と原子力ムラの責任追及 / 脱原発へ)

 

 

 

  1. 科学技術の挫折ともの豊かな生活への幻想からの脱却を

     無人の町に「原子力 明るい未来の エネルギー」の看板

     経済成長の壁と激突の悲劇 / 回避の可能性を求めて

     共生共貧---有機農業的くらし / 天与の資源大国・日本の風土に感謝して

     いのちの強さとすばらしさに確信して、自然なくらしと健康への道を